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2009年10月29日 (木)

栃の実物語(2)

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体験2

そこで、栃の実を触らしたら名人と云う栃餅作りの達人、

清左のカヅ子さんに指導してもらい、体験をすることにした。

先ず山で拾ってきた実は一晩水につけて、浮くものは捨てる。

天気のよい日に筵に広げて干す。

秋の日差しは湿気が少ないのでよいと言う。

実がかんからに乾いたら、米の空き袋に入れて保存する。

昔は馬笊に入れて保存していたと云う。

これを食べられるように加工するには

先ず乾いた実を水につけて戻す。

水がさらさらと流れている小川に10日ほどつけてから、

柔らかくして皮を剥く。

 

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筵に広げて干されている栃の実
9月頃、軒先で干してあるのをよく見かけます

 

子供たちは、この皮を剥くところから体験した。

皮を剥く道具が、これがまた何十年も

使い込まれた代物であった。

いかにも単純な作りで、台になる平らな木の上に

曲がった木を先のほうでくくりつけただけのもので、

斜めにこぜながら皮を剥くのである。

上から押すと実はつぶれるだけで、

皮は一向に剥けなかった。

子供たちの苦闘が始まった隣で、

達人がしょこ、しょこと簡単に剥いて見せた。

単純な道具ほど使いこなすのに

こつがいるのだと知らされた。


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栃の皮むき道具
片方を足で踏んでおき、栃の実を挟んでこじらせる
お婆さん用とお爺さん用の二つが並べて干してありました

 

皮を剥いて少し渋皮のついた実は

冷たいさらさらと流れる小川に

布の袋に入れて3昼夜つけられる。

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左近谷のとば口のところが少し深くなっていて
浸けておくのに丁度よい

 

こうしてみると、いかにきれいな水が流れている環境でないと

出来ないかが分かった。

しかし、この工程まではさほど難しいことではなかった。

水にさらした栃をたっぷりの水で3時間ほど煮る。

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この写真を撮った時は約4時間煮ておられました
煮上がった実を食べてみたら、やはり苦くてエグい

 

そして湯が冷めやらぬうちに、木灰を入れる。

灰の量は栃の実と同量だと聞いた。

灰と栃を混ぜて、こってりとした状態で暫くおく。

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煮たあとは45〜50°になるまで冷まし、灰を混ぜ合わせる。
手を浸けて十数えられるくらいの熱さ、とのこと。
灰の量はこのトロ箱一つにつき三升。混ぜ終わるとちょうど45°Cだった。
このまま蓋をしてゆっくりと冷ましていき、一昼夜おくと渋味がなくなる。

 

これを川で洗って、灰をきれいに流して取れば

栃の実は食べられる状態になると言う。

この工程を「栃に灰を合わす」と呼ぶ。

この工程は非常に難しく、達人の奥義が

如何なく発揮される部分だった。

栃の煮る具合と、灰を入れる頃合いと、

木灰その物の質あたりが重要であるらしい。

達人は「なんにも難しいことやないんや」とおっしゃるが、

子供たちには勿論のこと、

私たち素人には手の及ばぬ技だった。

ちょっとした灰の仕方によって

苦くてとても食い物にならなかったり、腑抜けのようになって

味も素っ気もないものになったりすると聞く。

ちょうどよい加減というのが達人の域であり、

この辺が灰の良し悪しで決まるのだろうか。

ただ達人の手際のよさを見て

みんな感心するばかりであった。

 

 栃の実物語(3)につづく

 

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