« 栃の実物語(2) | メイン | ガヤの実を食べてみる(2) »

2009年11月 2日 (月)

栃の実物語(3)


体験3

待ちに待った栃餅が食える日が来た。

二晩水につけたもち米1.5升と

栃の実1.5キロを混ぜて一緒に蒸す。

1時間もすると、栃特有の香りがぷーんとしてきた。

時間半ほど蒸して、木臼で手早く小搗きを

十分にしてから本搗きをするのである。

白い餅と違って早く硬くなるので、

手早くやってしまうことが大事だとおっしゃる。


濃い茶色の艶のある餅が搗き上がった。

達人は、餅を取りながら餡を入れて丸める。

二つのことを同時にする早業の取り餅をなさる。

その手際のよさにはみんな驚いた。

普通はちぎって取り、手の上で平らにして

餡を置き丸めるのだが、

このあたりもまねの出来ない早業であった。


体験した子供たちに、丸めた餅が三つずつ配られた。

口の中でもぐもぐしながら食っていたが、

眼を白黒させながら「うまぃ」といった。

山で栃をかじった時のあの苦々しさを

思い出したのだろうか・・・。

その子供は、残り二つを食わずに大事にポケット入れた。

「家へ帰って、おばあちゃんに食わしてあげるのだ」といった。


今の子供たちに、洟を垂らしていたり、

おできをつくっている子はいなくなった。

その代わりわけの分からぬ、アトピーとか、喘息とか、

花粉症みたいなのが出てきた。

素人には分からないが、食べ物との関係はないのだろうか。

日本民族のDNAの中には、穀物を食べて、

粗食に耐えられる遺伝子が含まれていると聞いたことがある。

現在の食事情は、多様化・高級化の中で、

すっかり肉を中心とした欧米様式になった感じがする。

この現代社会の中で、日本民族の昔の古きよき時代の、

黍や粟の食文化に触れることも大切ではないだろうか。


厳しい自然の環境に生き続ける栃の木と、

その自然の恵みを食文化に生かし、

若い世代へと受け継がせようと努力されておられる達人に

感謝したいと思う。

 

        おおい町文化協会 渡辺氏『栃の実物語』より

 

 

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.mitelog.jp/t/trackback/403720/21784225

栃の実物語(3)を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿