お風呂(六)
昔、新助の向かいにあったものだから
バケツを両の手にもって汲みに行った。
ツルベは上手に落とさないと、なかなかくめない。
ツルベの口が下になるように綱をしゃくって
調子を付けて落とした。
だが下手をすると綱むし※落とした。 (※綱ごと)
しまったと思っても、もう遅い。
でも大丈夫、其の時は新助に走って行って、
ツルベ掴み機を借りて来るのである。
「オンヂャン、又落とした。カシテクダンセ」と言うと
「又、落としたか」と笑われるのである。
其の道具は新助特有の機械であった。
今ボツボツ考へて見ると、川上に八十数軒あるなかで
井戸のある家は、不思議なことに数軒のみであった。
つづく
H17.7.1 善琢
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