トチ(七)
上手に茹った、丁度ころ合いに剥ける。
よおけ拾ろといたから、ええ正月が出けるど。
婆さん上得意、嬉しいかぎりである。
併し是からが大変なのである。
灰汁抜きと言う作業が残っている。
毎年うまへこと出けるから、心配はいらんと思うが
何と言ってもデケモンや、出けたら出けた時の事にせんと、
兎に角剥かにゃあかん。
女の人と云うのは、何から何まで大変だった。
栃の餅だけでは無い。
蓬(ヨモギ)、牛蒡の葉(ゴンボノハ)他、
色々の準備をしなくてはならぬ。
今考えたら痛ましい程の働き振りだった。
御飯時だって、こしらへて、一番あとに食べて片付ける。
風呂だってしまいぶろ。
爺さん(おとうさん)と言ったら何をしとんのか、
集会所に行って、あはは あははと言い乍ら、碁を打っている。
でも、しあわせ。
つづく
H17.9.12 善琢
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