山に入ってから、しらむ位いで無いと、
人に先を越される。
古い米袋を二つ用意して、セイタにくくりつけた。
短いナワのはしくれをもった。※
出けた、用意萬端、もう出かけるのみ。
時計が三時半を打った、揃々ゆこう。
なるべく静かに、家をはなれて歩く。
おゝ彼処の家はもう電気がついている。
足を早目に坂尻まで来た、
誰にも出合わずに来た。
一寸白みかけた、もう一息だ。
早よう出て来てよかった。
一寸涼しい気もする、足がはずむ。
サワガニが道を這っていた。
嵐の去ったあとはええ天気だ。
つづく
H17.9.9 善琢
※地下足袋の先にすべり止めで使う
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