« 山を越えた波切不動明王 | メイン | テーブル寄贈ありがとうございます »

2009年2月21日 (土)

ふるさとへの絵手紙

Etegami_3

とある休日の午後、淳先生のアトリエに

お邪魔しに行った時のこと。

そこで以前から話に聞いていた、前田さんという方からの

絵手紙を見せていただいた。

前田さんは昭和の中頃まで川上に住んでおられた方で、

昭和28年の13号台風による被害がきっかけでこの地を出られ、

今は静岡にお住まいになっておられるという。

その方が当時の川上を思い出し、故郷を懐かしんで

毎日欠かす事なく送ってこられた絵手紙だそうだ。

 
まず膨大な量の葉書に驚いた。

書棚の一角がその絵手紙の綴りで一杯になっている。

なんでも川上の家一軒々々についての思い出が

書き綴ってあるのだという。

一軒につき5枚以上の続き物になっており、

葉書を埋めつくすように小さな字が

びっしりと書き込まれている。

「そちの家のことも描いてあるさけぇよ、

持っていんでゆっくり見るとええ」と、

その中の一綴りを貸していただいた。

 
家に帰りじっくり読んでみると、これが面白い。

小さな字で綴られ、しかも達筆なので

読みづらい箇所も多々あるけれど、

当時の屋敷の絵やその家の人のこと、

関連する出来事がユーモラスに生き生きと、

かつての少年の目線で描写されている
(親と子以上に年の離れた方の作品を生意気にも評して大変失礼な話です、お許し下さい)

寺の火事とその後の顛末、

公民館に女性用避妊具のセールスが廻ってきた時の騒動など、

まだ自分が生まれてさえいなかった当時の情景が、

その場所に居合わせるかのごとく伝わってくる。

絵と文章による描写の上手さに加えて、

その舞台となる場所や人々の口調・方言を知っているのだから

尚の事なのだと思う。

昔の言葉づかいや難読箇所に悩みつつ、

ニヤニヤしながら読んでいたら家族に怪訝な顔をされた。

 

ともあれ、これだけ沢山のことを仔細に覚えておられ、

しかも毎日描かれておられるのには頭が下がる。

単に筆まめというだけではなかなか説明がつきにくい。

遠く離れたふるさとには何か心を捉えて離さない

魔力みたいなものがあるのだろうか。

 
 

この絵手紙については私信の上、特定個人の描写も多々あるのでそのまま紹介できないのが残念です。
しかしこの中には、祭りのことや藁仕事、栃拾いのことなど、教室では学ぶことのできない生きた経験が沢山詰まっています。もしご本人のお許しが頂けるなら、この内の一部でもいつか掲載してご紹介したいなあと考えています。

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.mitelog.jp/t/trackback/403720/18623370

ふるさとへの絵手紙を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿