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2009年2月16日 (月)

「昭和の伝言」より

「昭和の伝言」は10年前に大飯町(当時)の公民館から発行された冊子です。38人の大飯町のお年寄りに、昭和時代の体験談(楽しかったこと・苦しかったこと、若い人への一言、長生きの秘訣)を語ってもらい、それらがまとめられ綴られています。
その中に川上の久右門さん(故人)の頁がありますので、一部を抜粋して掲載します。


楽しかったこと・苦しかったこと

いちばん大きかったのは、そりゃ戦争と台風やの。

戦争でどっくりなんして、帰ってきてようやくおちついた時に

あの大きな台風やんの、あれでそりゃほんまに。

 

S28_13g_sakomae
昭和28年、13号台風の 爪痕(旧川上分校周辺)
佐分利川の堤防が跡形も無く流失しています

S28_13g_simizu
清水橋の辺りは一面が 河原のような状態

 
わいらの兵隊検査済んで、23か4の時分から

もう戦争の気配がして、12年から支那事変やろ、

ほして20年まで戦争でごたごたばっかりしとって、

たいていの者は、ほれ満州行ったなり、ほしてようやく

済んで帰って来て、ちいとしかけた思た時に

又、あの台風で3年程ごたごたが続いた。

わいらの若い間のないやらいうもんはよう、あの戦争と

台風でほんまに楽な間なしやったのう。
 

それから昔から伝わっとる行事なんか、

もうあれでみな川上らぁもないようになってしもた。

台風のあとちゃんとおちついてようなりかけたら、

もうなんや自由、自由でみんなの気持ちが

川上らぁでもそうやけど、全然変わってしもたのう。

まあ我々の時分は家内でひとつの仕事を、

一生懸命炭を焼くとか、田んぼ作るとか、

そんなことだけやっとったやんの。

もうそれはどうでもだんねえ、みんなめんめんこに

土方行って金さえとってくりゃええことになってしもて、

そのかわり今、現金収入で楽やわの。

もう和いうことが、ほんまにねえようになってきた。

「我が身さえ良ければええ」式のないらが、

よう目立つようになってきた。

あれはもうちょっとみんなが、お互いに助けおうて

ゆくようなことをもうちいとやって欲しいと思うけんど、

我が身さえようけ金が入ったらええいうことやの、

今の世の中は。

貧しかったらみんなあ助け合うことは出来るんやけど、

みんな楽になってぇとそんなもの

その気にはならんのやろ、そりゃ。

今はこないして景気がええさかい、

みんな楽にいけるんやけぇど、これ景気が悪なって

仕事がちょっとないよんなったりなんやしたぐらいなら、

みんなあ困るんや。

こんなええ時代がいつまでも続いてくれればええけど。

 
川上らぁに昔から伝わっておる祭りやなんやいうことは、

もう何年間あらせんわ。これはやっぱり淋しいわの、ほんま。

そりゃ昔のあんまり堅いことは、ちょっとやらこぉしてでも

伝えていくんやとええけぇど。

もうそうやさかい、伝わっとるようなこと川上らぁでも、

ほんまにねえよんなってきた。

昔から伝わっとったこと、せめてひとつやふたつ

残して欲しいと思うけんど、始まらんのやのう。

ほしてのう、またやってみよう言うたって、

長い間ないもんでそれをしっかり覚えとったいうようなもんも

おらんしな。そやけどみんなあして考えりゃ、

またそこそこに出来るやけぇど。

 
昔は盆踊りの歌でものう、一生懸命歌いもってやっとる人も

あったわな。そんなこと今は、なんせ山行かんせんし

田んぼ行っても、田植え歌やらうとうとる暇もないしなあ。

なんせちいたてやっといては、仕事に行かんなんのやさかい。

昔は山行ってのん気に歌いもって仕事をやっとったさかい。

そりゃ今あんだけ機械ワーワーつことったら、

歌も出んわの、そりゃ。

それを知っとる人がもう少なくなったやろしの。

 

Taue003
昭和30年代の田植え風景(助大前)

 

今の若者に一言

わいら老人会に行って、いろいろ言うたってやの、

若いもんとの接触いうものが無いようになってきたんやわの。

前はいつまでも年寄りが区の集会なんか行ったやんの。

そやけど今はもう、年寄りらぁの行くものは、

ほん息子のおらんもんこそのう。

そんなもん行ったって、わいらが言うたって

誰もかたってくれせんし。昔はいつまででも

年寄りが威張っとったけぇど、今はもう若いもんの

言うようじゃなかったらあかへんもんで。

ほんで若いもんがもうちぃと、考えてくれると

ええなあと思うけぇど。年寄りがわやわや言うとたって、

もう先がみえとんのやさかい、そんなことあかせんし、

若い人らぁがその気になってもらわんてぇと。

そりゃ景気がよぉてみんな楽になっと、

なかなかその気になれんやわの。

 

(昭和の伝言 平成2年3月31日 大飯町公民館発行より抜粋)

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